2017/11

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 グラフィックデザイン




その頃の私はとても仕事で忙しく、
プライベートも複雑だったので、
とてもイラついていた。


友人と大塚で喧嘩をしてしまって、

とりあえずタクシーを拾った。




窓の外は夜。

ぼーっとした私の顔を照らす街の灯り。





「こんなこともあるんですね!」

急に運転手が話し始めた。


「なにが?」

「いやね、たまにはいいことがあるもんだなって。」

「?」

「こう景気が悪いとなかなかいい仕事がないんですよ。」
「大きい仕事を取ろうと思って池袋へ出てもまた大塚にもどっちまう。」


そうか。
私が頼んだ遠距離が、この運転手には喜ばしいことなのだ。

ふたりを乗せて、山手通りは流れる。





「あたしが東京に出てきたのは昭和35年でした。

新宿の友達のアパートに転がり込んでね、

それでタクシー始めたんですよー。」

「一日走って日当が50円。
カレーライスが一杯食べられるお金でしたねー。」

50円のしあわせ。
そんな時代もあったんだ。




タクシーは山手通りを進んで早稲田通りで右折。
高田馬場を進んで行く。

あぁ、私が二十歳で入社した会社があった場所だ。
あの頃は毎日一生懸命だった。




ふと小雨がフロントウィンドウを叩く。

ちょっと話してはまた黙るのが、客と運転手のルールなのか?






「その頃は車種が二種類あってね、

セドリック派とブルーバード派。

あたしゃーブルーバード派でしたっけ。」





この運転手は本当に喜んでくれている。この距離を。




その頃、私はお金に麻痺していた。

大きい仕事や売上げ目標。

紙の上だけの“億”という表現。


毎日がずるずると流れてしまって、何かを忘れていた。



たった数円のしあわせだってあるじゃないか。




もうすぐマンションが見えてくる。
そこでは家族が待っている。


それだけでしあわせじゃないか。







さーーっ。

「はい。つきましたよ。」


小雨は晴れていた。




「お忘れ物はありませんか?」


「いいえ。  みつかりました。」







ありがとう。


ブルーバードみっけ。







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